なくも、末葉元葉を分けて行く風に砕けてはら/\と散るは真《まこと》に即無常、金口説偈《きんくせげ》の姿なれども、※[#「目+(黒の旧字/土)」、117−上−19]※[#「塞」の「土」に代えて「目」、117−上−19]《ぼくそく》として視る無き瞎驢《くわつろ》の何を悟らむ由もなく、いたづらに御祓《みそぎ》済《すま》してとり流す幣《ぬさ》もろともに夏を送り、窓おとづるゝ初時雨に冬を迎へて世を経しが、物に定まれる性なし、人いづくんぞ常に悪《あし》からむ、縁に遇へば則ち庸愚《ようぐ》も大道を庶幾《しょき》し、教に順ずるときんば凡夫も賢聖に斉しからむことを思ふと、高野大師の宣ひしも嬉しや。一歳《ひととせ》法勝寺御幸の節、郎等一人六条の判官《はうぐわん》が手のものに搦められしを、厭離《おんり》の牙種《げしゆ》、欣求《ごんぐ》の胞葉《はうえふ》として、大治二年の十月十一日拙き和歌の御感に預り、忝なくも勅禄には朝日丸の御佩刀《おんはかせ》をたまはり、女院の御方よりは十五重りたる紅の御衣を賜はり、身に余りある面目を施せしも、畏くはあれど心それらに留まらず、ひたすら世路を出でゝ菩提に入り敷華成果《ふげじや
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