淡島寒月のこと
幸田露伴
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)看過《みすご》して
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)磨※[#「龍/石」、第3水準1−89−17]に
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)つか/\と近寄つて
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吾が友といつては少し不遜に當るかも知れないが、先づ友達といふことにして、淡島寒月といふ人は實に稀有な人であつた。やゝもすれば畸人の稱を與へたがる者もあるが、畸人でも何でもない、むしろ常識の圓滿に驚くばかり發達した人で、そして徹底的に世俗の眞實が何樣なものであるかといふことを知盡した人であつた。しかも多くの人は苦勞をしたり困難に出會つたり、痛い思や辛い目を見たりしてから、はじめて浮世の鹽辛さを悟るのであるが、別に人生の磨※[#「龍/石」、第3水準1−89−17]に逢つたといふこともないらしい生活を經て來て、夙く然樣いふ境地に到り得てゐたのであつたのは、裏面の消息はもとより知らぬが、蓋し天稟の聰
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