御家再興も眼に見えてござるぞ。」
というと、人々皆勇み立ち悦ぶ。
「損得にはそれがしも引廻されてござるかナ。」
と自ら疑うように又自ら歎《たん》ずるように、木沢は室《へや》の一隅を睨《にら》んだ。


 其後|幾日《いくか》も無くて、河内の平野の城へ突として夜打がかかった。城将桃井兵庫、客将一色|何某《なにがし》は打って取られ、城は遊佐河内守等の拠るところとなった。其一党は日に勢を増して、漸《ようや》く旧威を揮《ふる》い、大和に潜んで居た畠山尚慶を迎えて之を守立て、河内の高屋《たかや》に城を構えて本拠とし、遂に尚慶をして相当に其大を成さしむるに至った。平野の城が落ちた夜と同じ夜に、誰がしたことだか分らなかったが、臙脂屋の内に首が投込まれた。京の公卿方《くげがた》の者で、それは学問諸芸を堺の有徳の町人の間に日頃教えていた者だったということが知られた。



底本:「昭和文学全集 第4巻」小学館
   1989(平成元)年4月1日初版第1刷
底本の親本:「露伴全集」岩波書店
   1978(昭和53)年
入力:kompass
校正:今井忠夫
2003年5月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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