幸田露伴

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)味《あじはひ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)神味|頓《とみ》に加はりて、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「さけのとり+囚+皿」、第3水準1−92−88、19−2]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
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 一切の味《あぢはひ》は水を藉《か》らざれば其の味を発する能はず。人若し口の渇くこと甚しくして舌の燥《かわ》くこと急なれば、熊の掌《たなそこ》も魚の腴《あぶらみ》も、それ何かあらん。味は唾液の之を解き之を親ましむるによつて人の感ずるところとなるのみ。唾液にして存せざれば、五味もまた無用のものたらん。唾液は水なり、ムチンの存在によつて粘《ねば》きも、其実は弱アルカリ性の水にして、酵素のプチアリンを含めるのみ。此中プチアリンは消化作用の一助をなすに止まり、ムチンは蓋し外物の強烈の刺激を緩和する為に存せりと覚しく、味を解き
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