るなるが、その深さ大抵二|尋《ひろ》以上、上総澪はその深さにおいて及ばざること遠し。是の如くなるを以て北品川の陸嘴《りくし》より東北に向つて海上に散布されたる造船所、第一台場、第五台場、第二台場、第六台場、第三台場、未成のままにて終りし第七台場附近の地のやゝ深きを除きては、月島下流の地も芝浜沖も、東の方は越中島沖も木場沖も洲崎遊廓沖も砂村沖も、皆大抵春末の大干潮には現れ出づるほどの砂洲にして、これらの砂洲の上は即ち満都の士女等が
○汐干狩の楽地として、春末夏初の風|和《のど》かに天暖かなる頃、あるいは蛤蜊《こうり》を爪紅《つまくれない》の手に撈《と》るあり、あるいは銛《もり》を手にして牛尾魚《こち》比目魚《ひらめ》を突かんとするもあるところなり。釣魚の場、投網の場もまた多くはこれら砂洲の上にあり。海苔を収むるがために「ひゞ」と称して麁朶《そだ》を海中に柵立するところも、またこの砂洲の上もしくはその附近の地なり。中川の澪は洲崎の沖の方に東より来りて横《よこた》はれるなるが、本澪、上総澪、台場附近と共にこれらの澪筋もまた釣魚の場所たり。東京湾は甚だ広けれども品川以北中川以西即ち東京の前面の
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