舞った。
この小学校に通《かよ》って居る間に種々《いろいろ》の可笑しい話があるので。同級の生徒の中に西勃平というのと細川順太郎というのと私と、先ず此三人が年も同じ十一二歳で、気が合った朋友《ともだち》であった。この西勃平というのは、ああ今でも顔を能く覚えて居る。肥った饅頭面の、眼の小さい、随分おもしろい盛んな湾泊者《わんぱくもの》で、相撲を取って負かして置いて罵って遣ると、小さい眼からポロポロと涙を溢《こぼ》しながら非常な勢いで突かかって来るというような愉快な男でした。それで、己《おれ》は周勃と陳平とを一緒にしたんだなどと意張るのです。すると私が、何だ貴様が周勃と陳平とを一緒にしたのなら己は正成と正行とを一緒にしたのだと云って互に意張り合って、さあ来いというので角力を取る、喧嘩をする。正行が鼻血を出したり、陳平が泣面をしたりするという騒ぎが毎々でした。細川はそういうことは仕ない大人《おとな》のような小児《こども》でした。此二人は後にまた中学校でも落合ったことがあるので能くおぼえて居ました。
また此外に矢張りこれも同級の男で野崎というのがありましたが、此野崎の家は明神前で袋物などをも
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