漸く安固ならんとする傾を示して来て、然様無暗に修羅心に任せて※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]きまはることも無効ならんとする勢の見ゆる時に於て、何様して趣味の慾が頭を擡げずに居よう。況んや又趣味には高下も有り優劣も有るから、優越の地に立ちたいといふ優勝慾も無論手伝ふことであつて、こゝに茶事といふ孤独的で無い会合的の興味ある事が存するに於ては、誰か茶讌を好まぬものが有らう。そして又誰か他人の所有に優るところの面白い、味のある、平凡ならぬ骨董を得ることを悦ばぬ者が有らう。需《もと》むる者が多くて、給さるべき物は少い。さあ骨董が何様して貴きが上にも貴くならずに居よう。上は大名達より、下は有福の町人に至るまで、競つて高慢税を払はうとした。税率は人※[#二の字点、1−2−22]が寄つてたかつて競《せ》り上げた。北野の大茶の湯なんて、馬鹿気たことでも無く、不風流の事でも無いか知らぬが、一方から観れば天下を茶の煙りに巻いて、大煽りに煽つたもので、高慢競争をさせたやうなものだ。扨又当時に於て秀吉の威光を背後に負ひて、目眩いほどに光り輝いたものは千利休であつた。勿論利休は不世出の英霊漢である
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