]王が杭州に寓して居られた。延珸は※[#「さんずい+路」、第3水準1−87−11]王の承奉兪啓雲といふ者に遇つて、贋鼎を出して示して、これが唐氏旧蔵の大名物と誇耀した。そして※[#「さんずい+路」、第3水準1−87−11]王に手引して貰つて、手取り千六百金、四百金を承奉に贈ることにして、二千金で売付けた。時はもう明末にかゝり、万事不束で、人も満足なものも無かつたので、一厨役の少し麁※[#「滷−さんずい」、第3水準1−83−35]《そろ》なものに其鼎を蔵した管龠《くわんやく》を扱はせたので、其男があやまつて其の贋鼎の一足を折つて仕舞つた。で、其男は罪を懼れて身を投げて死んで終つた。其頃大兵が杭州に入り来たつて、※[#「さんずい+路」、第3水準1−87−11]王は奔り、承奉は廃鼎を銭塘江《せんたうかう》に沈めて仕舞つたといふ。
 これで此の一条の談は終りであるが、骨董といふものに附随して随分種※[#二の字点、1−2−22]の現象が見られることは、ひとり此の談のみの事では有るまい。骨董は好い、骨董はおもしろい。たゞし願はくはスラリと大枚な高慢税を出して楽みたい。廷珸や正賓のやうな者に誰しも関
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