ふことを云つて置いた。杜生はお坊さんで、延珸の謀つた通りになり、鼎は廷珸の手に落ちて了つた。廷珸は大喜びで、天下一品、価値万金なんどと大法螺を吹立て、かねて好事《かうず》で鳴つてゐる徐六岳《じよりくがく》といふ大紳に売付けにかゝつた。徐六岳を最初から延珸は好い鳥だと狙つて居たのであらう。ところが徐はあまり延珸が狡譎《かうきつ》なのを悪んで、横を向いて了つた。延珸はアテがはづれて困つたが仕方が無かつた。もとよりヤリクリをして、狡辛《こすから》く世を送つてゐるものだから、嵌め込む目的《あて》が無い時は質に入れたり、色気の見える客が出た時は急に質受けしたり、十余年の間といふものは、まるで碁を打つやうなカラクリを仕てゐた其の間に、同じやうな族類系統の肖《に》たものをいろ/\求めて、何様かして甘い汁を啜らうとして居た。其中に泰興の季因是《きいんぜ》といふ、相当の位地のある者が延珸に引かゝつた。
 季因是もかねて唐家の定窯鼎の事を耳にしてゐた。勿論見た事も無ければ、詳しい談を聞いてゐたのでも無い。たゞ其の名に憧れて、大した名物だといふことを知つて居たに過ぎない。延珸は因是の甘いお客だといふことを見
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