の囃し言葉に連接してゐるので、骨董といふことが銅器などを云ふことに転じて来たことになるのである。又それから種※[#二の字点、1−2−22]の古物をも云ふことになつたのである。骨董は古銅の音転などといふ解は、本を知らずして末に就いて巧解したもので、少し手取り早過ぎた似而非《えせ》解釈といふ訳になる。
又、蘇東坡が種※[#二の字点、1−2−22]の食物を雑へ烹《に》て、これを骨董羮と曰《い》つた。其の骨董は零雑の義で、恰も我邦俗のゴッタ煮ゴッタ汁などといふゴッタの意味に当る。それも字面には別に義があるのでは無い。又、水に落つる声を骨董といふ。それもコトンと落ちる響を骨董の字音を仮りて現はしたまでで、字面に何の義も有るのでは無い。畢竟骨董はいづれも文字国の支那の文字であるが、文字の義からの文字では無く、言語の音からの文字であつて、文字は仮りものであるから、それに訓詁的のむづかしい理屈は無い。
そんな事は何様でも可いが、兎に角に骨董といふことは、貴いものは周鼎漢彝玉器《しうていかんいぎよくき》の類から、下つては竹木雑器に至るまでの間、書画法帖、琴剣鏡硯、陶磁の類、何でも彼でも古い物一切を云
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