の指した者は頑鉄も黄金となつたのである。点鉄成金は仙術の事だが、利休は実に霊術を有する天仙の臨凡《りんぼん》したのであつたのである。一世は利休に追随したのである。人※[#二の字点、1−2−22]は争つて利休の貴しとした物を貴しとした。これを得る喜悦、これを得る高慢のために高慢税を納めることを敢てしたのである、其の高慢税の額は間接に皆利休の査定するところであつたのである。自身は其様な卑役を取るつもりは無かつたらうが、自然の勢で自分も知らぬ間に何時か然様いふ役廻りをさせられるやうになつてゐたのである。骨董が黄金何枚何十枚、一郡一城、或は血みどろの悪戦の功労とも匹敵するやうなことになつた。換言すれば骨董は一種の不換紙幣のやうなものになつたので、そして其の不換紙幣の発行者は利休といふ訳になつたやうなものである。西郷が出したり大隈が出したりした不換紙幣は直に価値が低くなつたが、利休の出した不換紙幣は其後何百年を経て猶其価値を保つてゐる。流石に秀吉はエライ人間をつかまへて不換紙幣発行者としたもので、そして利休は又ホントに無慾で而も煉金術を真に能くした神仙であつたのである。不換紙幣は当時|何程《どれ
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