高い定鼎を拝見して、生平《せいへい》の渇望を慰《い》したいと申出《もうしだ》した。君兪は金《かね》で面《つら》を撲《は》るような九如を余り好みもせず、かつ自分の家柄からして下眼に視たことででもあろう、ウン御覧に入れましょうといって半分冗談に、真鼎は深蔵したまま、彼《か》の周丹泉が倣造《ほうぞう》した副の方の贋鼎《がんてい》を出して視せた。贋鼎だって、最初真鼎の持主の凝菴が歎服した位のものではあり、まして真鼎を目にしたことはない九如であるから、贋物と悟ろうようはない、すっかりその高雅妙巧の威に撲《う》たれて終《しま》って、堪《たま》らない佳い物だと思い込んで惚《ほ》れ惚れした。そこで無理やりに千金を押付《おしつけ》て、別に二百金を中間に立って取做《とりな》してくれる人に酬《むく》い、そして贋鼎を豪奪《ごうだつ》するようにして去った。巧偸豪奪《こうゆごうだつ》という語は、宋の頃から既に数※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》見える語で、骨董好きの人※[#二の字点、1−2−22]には豪奪ということも自然と起らざるを得ぬことである。マアそれも恕《じょ》すべきこととすれば恕すべきことである。
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