道理、万が一にも仕損じてはお上人様源太親方に十兵衛の顔が向けらりょうか、これ、生きても塔ができねばな、この十兵衛は死んだ同然、死んでも業《わざ》をし遂げれば汝が夫《おやじ》は生きて居るわい、二寸三寸の手斧傷《ちょうなきず》に臥《ね》て居られるか居られぬか、破傷風が怖《おそ》ろしいか仕事のできぬが怖ろしいか、よしや片腕|奪《と》られたとて一切成就の暁までは駕籠《かご》に乗っても行かではいぬ、ましてやこれしきの蚯蚓膨《みみずば》れに、と云いつつお浪が手中より奪いとったる腹掛けに、左の手を通さんとして顰《しか》むる顔、見るに女房の争えず、争いまけて傷をいたわり、ついに半天股引まで着せて出しける心の中、何とも口には云いがたかるべし。
 十兵衛よもや来はせじと思い合うたる職人ども、ちらりほらりと辰の刻ころより来て見てびっくりする途端、精出してくるる嬉しいぞ、との一言を十兵衛から受けて皆冷汗をかきけるが、これより一同《みなみな》励み勤め昨日に変る身のこなし、一をきいては三まで働き、二と云われしには四まで動けば、のっそり片腕の用を欠いてかえって多くの腕を得つ日々《にちにち》工事《しごと》捗取《はかど
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