ら》衝き上がりて、汝十兵衞恩知らずめ、良人《うち》の心の広いのをよい事にして付上り、うま/\名を揚げ身を立るか、よし名の揚り身の立たば差詰礼にも来べき筈を、知らぬ顔して鼻高※[#二の字点、1−2−22]と其日※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]を送りくさる歟、余りに性質《ひと》の好過ぎたる良人《うち》も良人なら面憎きのつそりめもまたのつそりめと、折にふれては八重縦横に癇癪の虫跳ね廻らし、自己《おの》が小鬢の後毛上げても、ゑゝ焦つたいと罪の無き髪を掻きむしり、一文貰ひに乞食が来ても甲張り声に酷く謝絶りなどしけるが、或日源太が不在《るす》のところへ心易き医者道益といふ饒舌坊主遊びに来りて、四方八方《よもやま》の話の末、或人に連れられて過般《このあひだ》蓬莱屋へまゐりましたが、お傳といふ女からきゝました一分始終、いやどうも此方の棟梁は違つたもの、えらいもの、男児は左様あり度と感服いたしました、と御世辞半分何の気なしに云ひ出でし詞を、手繰つて其夜の仔細をきけば、知らずに居てさへ口惜しきに知つては重※[#二の字点、1−2−22]憎き十兵衞、お吉いよ/\腹を立ちぬ。
前へ
次へ
全134ページ中93ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング