れど、また云ひ出さば笑はれむと自分で呵《しか》つて平日《いつも》よりは笑顔をつくり言葉にも活気をもたせ、溌※[#二の字点、1−2−22]《いき/\》として夫をあしらひ子をあしらへど、根が態とせし偽飾《いつはり》なれば却つて笑ひの尻声が憂愁《うれひ》の響きを遺して去る光景《ありさま》の悲しげなるところへ、十兵衞殿お宅か、と押柄《あふへい》に大人びた口きゝながら這入り来る小坊主、高慢にちよこんと上り込み、御用あるにつき直と来られべしと前後《あとさき》無しの棒口上。
 お浪も不審、十兵衞も分らぬことに思へども辞《いな》みもならねば、既《はや》感応寺の門くゞるさへ無益《むやく》しくは考へつゝも、何御用ぞと行つて問へば、天地顛倒こりや何《どう》ぢや、夢か現か真実か、圓道右に爲右衞門左に朗圓上人|中央《まんなか》に坐したまふて、圓道言葉おごそかに、此度|建立《こんりふ》なるところの生雲塔の一切工事川越源太に任せられべき筈のところ、方丈思しめし寄らるゝことあり格別の御詮議例外の御慈悲をもつて、十兵衞其方に確《しか》と御任せ相成る、辞退の儀は決して無用なり、早※[#二の字点、1−2−22]ありがたく御
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