折しも、むく/\と起き上つたる清吉|寝惚眼《ねぼれめ》をこすり/\怪訝顔してまごつくに、お吉とも/″\噴飯《ふきだ》して笑ひ、清吉昨夜は如何したか、と嬲《なぶ》れば急に危坐《かしこま》つて無茶苦茶に頭を下げ、つい御馳走になり過ぎて何時か知らず寝て仕舞ひました、姉御、昨夜|私《わつち》は何か悪いことでも為は仕ませぬか、と心配相に尋ぬるも可笑く、まあ何でも好いは、飯でも食つて仕事に行きやれ、と和《やさ》しく云はれてます/\畏《おそ》れ、恍然《うつとり》として腕を組み頻りに考へ込む風情、正直なるが可愛らし。
清吉を出しやりたる後、源太は尚も考にひとり沈みて日頃の快活《さつぱり》とした調子に似もやらず、碌※[#二の字点、1−2−22]お吉に口さへきかで思案に思案を凝らせしが、あゝ解つたと独り言するかと思へば、愍然《ふびん》なと溜息つき、ゑゝ抛《なげ》やうかと云ふかとおもへば、何して呉れうと腹立つ様子を傍にてお吉の見る辛さ、問ひ慰めんと口を出せば黙つて居よとやりこめられ、詮方なさに胸の中にて空しく心をいたむるばかり。源太は其等に関ひもせず夕暮方まで考へ考へ、漸く思ひ定めやしけむ衝《つ》と身を起
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