点、1−2−22]自分の不運を泣きますは、御上人様、時※[#二の字点、1−2−22]は口惜くて技倆《うで》もない癖に智慧ばかり達者な奴が憎くもなりまするは、御上人様、源太様は羨ましい、智慧も達者なれば手腕《うで》も達者、あゝ羨ましい仕事をなさるか、我《おれ》はよ、源太様はよ、情無い此我はよと、羨ましいがつひ高《かう》じて女房《かゝ》にも口きかず泣きながら寐ました其夜の事、五重塔を汝《きさま》作れ今直つくれと怖しい人に吩咐《いひつ》けられ、狼狽《うろたへ》て飛び起きさまに道具箱へ手を突込んだは半分夢で半分|現《うつゝ》、眼が全く覚めて見ますれば指の先を鐔鑿《つばのみ》につつかけて怪我をしながら道具箱につかまつて、何時の間にか夜具の中から出て居た詰らなさ、行燈《あんどん》の前につくねんと坐つて嗚呼情無い、詰らないと思ひました時の其心持、御上人様、解りまするか、ゑゝ、解りまするか、これだけが誰にでも分つて呉れゝば塔も建てなくてもよいのです、どうせ馬鹿なのつそり[#「のつそり」に傍点]十兵衞は死んでもよいのでござりまする、腰抜|鋸《のこ》のやうに生て居たくもないのですは、其夜《それ》からといふ
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