の冷たいに破傷風にでもなつたら何となさる、どうか臥むで居て下され、お湯ももう直沸きませうほどに含嗽《うがひ》手水《てうづ》も其所で妾が為せてあげませう、と破土竃《やぶれべつつひ》にかけたる羽虧《はか》け釜の下焚きつけながら気を揉んで云へど、一向平気の十兵衞笑つて、病人あしらひにされるまでの事はない、手拭だけを絞つて貰へば顔も一人で洗ふたが好い気持ぢや、と箍《たが》の緩みし小盥に自ら水を汲み取りて、別段悩める容態《やうす》も無く平日《ふだん》の如く振舞へば、お浪は呆れ且つ案ずるに、のつそり少しも頓着せず朝食《あさめし》終ふて立上り、突然《いきなり》衣物を脱ぎ捨てゝ股引腹掛|着《つけ》にかゝるを、飛んでも無い事何処へ行かるゝ、何程仕事の大事ぢやとて昨日の今日は疵口の合ひもすまいし痛みも去るまじ、泰然《ぢつ》として居よ身体を使ふな、仔細は無けれど治癒《なほ》るまでは万般《よろづ》要慎《つゝしみ》第一と云はれた御医者様の言葉さへあるに、無理圧して感応寺に行かるゝ心か、強過ぎる、仮令行つたとて働きはなるまじ、行かいでも誰が咎めう、行かで済まぬと思はるゝなら妾が一寸《ちよと》一[#(ト)]走り、お
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