幻談
幸田露伴

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)皆さん方《がた》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一行|即《すなわ》ち

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)[#「※」は「たけかんむり+隻」、17−8]
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 こう暑くなっては皆さん方《がた》があるいは高い山に行かれたり、あるいは涼《すず》しい海辺《うみべ》に行かれたりしまして、そうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送ろうとなさるのも御尤《ごもっと》もです。が、もう老い朽《く》ちてしまえば山へも行かれず、海へも出られないでいますが、その代り小庭《こにわ》の朝露《あさつゆ》、縁側《えんがわ》の夕風ぐらいに満足して、無難に平和な日を過して行けるというもので、まあ年寄《としより》はそこいらで落着いて行かなければならないのが自然なのです。山へ登るのも極《ご》くいいことであります。深山《しんざん》に入り、高山、嶮山《けんざん》なんぞへ登るということになると、一種の神秘的な興味も多いことです。その代りまた危険も
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