て政宗の異心|謀叛《むほん》、疑無しと見え申す、其処に二三日も御|逗留《とうりゅう》ありて猶《なお》其体をも御覧有るべし、と告げた。すると氏郷は警告を賞して之に従うかと思いのほか、大に怒って瞋眼《しんがん》から光を放った。ここは流石《さすが》に氏郷だ。二人を睨《にら》み据えて言葉も荒々しく、政宗謀叛とは初めより覚悟してこそ若松を出でたれ、何方《いずく》にもあれ支えたらば踏潰《ふみつぶ》そうまでじゃ、明日《あす》は早天に打立とうず、と罵《ののし》った。総軍はこれを聞いてウンと腹の中に堪《こた》えが出来た。
 政宗勢の方にも戦場往来の功を経た者は勿論有るし、他の軍勢の様子を見て取ろうとする眼は光って居たに違無い。見ると蒲生勢は凜《りん》としている、其頃の言葉に云う「戦《たたかい》を持っている」のである。戦を持っているというのは、何時でも火蓋《ひぶた》を切って遣りつけて呉れよう、というのである。コレハと思ったに違いない。
 氏郷は翌日早朝に天気の不利を冒して二本松を立った。今の街道よりは西の方なる、今の福島近くの大森の城に着いた。政宗遅滞するならば案内の任を有っている者より先へも進むべき勢を
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