流し汗を瀝《したた》らして切取った上に拠ったところの地で、いやいやながら差出したところであり、人情として涎《よだれ》を垂らし頤《あご》を朶《た》れて居るところである、又|然《さ》なくとも崛強《くっきょう》なる奥州の地武士が何を仕出さぬとも限らぬところである、また然様いう心配が無くとも広闊《こうかつ》な出羽奥州に信任すべき一雄将をも置かずして、新付《しんぷ》の奥羽の大名等の誰にもせよに任かせて置くことは出来ぬところである。是《ここ》に於て誰か知ら然る可き人物を会津の主将に据えて、奥州出羽の押えの大任、わけては伊達政宗をのさばり出さぬように、表はじっとりと扱って事端を発させぬように、内々はごっつりと手強くアテテ屏息《へいそく》させるような、シッカリした者を必要とするのである。
此のむずかしい場処の、むずかしい場合の、むずかしい役目を引受けさせられたのが鎮守府将軍田原|藤太秀郷《とうだひでさと》の末孫《ばっそん》と云われ、江州《ごうしゅう》日野の城主から起って、今は勢州松坂に一方の将軍星として光を放って居た蒲生忠三郎氏郷であった。
氏郷が会津の守護、奥州出羽の押えに任ぜられたに就ては面白
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