、第4水準2−84−52、146−11]、沁芳の泉、楓露の茗四つのものを捧げ、嘔心の文を念じつ祭りしといへるものがたりいとをかし。橋場のさる人の庭のいと濶きに此花のいと多く咲きたるを見しそれの年の秋の夕暮、かゝるところにてこそさる男も泣きけめと、楸楡《しうゆ》颯々|蓬艾《ほうがい》蕭々として夕月の光り薄く西風の音の淋しかりしまゝ、勝れて艶なる此花を見る/\徘徊《たもとほ》りて想ひやりたることありき。物語は皆まことにもあらぬを、おもへば我も彼男に劣らずおろかなる思ひを馳せたるかな、と後に自からあざ笑ひけるも、今またおもへば、それもことさらに我賢からんと願ひたるやうにていよ/\おろかなることなりけり。
底本:「露伴全集 第29巻」岩波書店
1954(昭和29)年12月4日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を次の通りあらためました。
1.常用漢字表、人名漢字別表に掲げられている漢字を新字にあらためました。
ただし、人名については底本のままとしました。
※底本に見られる「劒」は「剣」に書き換えました。
※「悠々」「山々」「国々」などの「々」は、底本では二の字点(第3水準1−2−22)を使用
※「一ト」「二タ」の各カタカナは、底本では小さな文字を使用
入力:地田尚
校正:今井忠夫
2001年6月18日公開
青空文庫作成ファイル:
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