譚《だん》に、神仙縹緲《しんせんひょうびょう》の趣《しゅ》を交《まじ》ゆ。西遊記《さいゆうき》に似て、而《しか》も其の誇誕《こたん》は少しく遜《ゆず》り、水滸伝に近くして、而も其《そ》の豪快は及ばず、三国志の如《ごと》くして、而も其の殺伐はやゝ少《すくな》し。たゞ其の三者の佳致《かち》を併有して、一編の奇話を構成するところは、女仙外史の西遊水滸三国諸書に勝《まさ》る所以《ゆえん》にして、其の大体の風度《ふうど》は平妖伝に似たりというべし。憾《うら》むらくは、通篇《つうへん》儒生《じゅせい》の口吻《こうふん》多くして、説話は硬固勃率《こうこぼっそつ》、談笑に流暢尖新《りゅうちょうせんしん》のところ少《すくな》きのみ。
女仙外史の名は其の実《じつ》を語る。主人公|月君《げっくん》、これを輔《たす》くるの鮑師《ほうし》、曼尼《まんに》、公孫大娘《こうそんたいじょう》、聶隠娘《しょういんじょう》等皆女仙なり。鮑聶《ほうしょう》等の女仙は、もと古伝雑説より取り来《きた》って彩色となすに過ぎず、而《しこう》して月君は即《すなわ》ち山東蒲台《さんとうほだい》の妖婦《ようふ》唐賽児《とうさいじ》なり
前へ
次へ
全232ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング