《えいけいじ》に宿《しゅく》して詩を題して曰く、

[#ここから2字下げ]
杖錫《じょうしゃく》 来《きた》り遊びて 歳月深し、
山雲 水月 閑吟に傍《そ》ふ。
塵心《じんしん》 消尽《しょうじん》して 些子《さし》も無し、
受けず 人間の物色の侵すを。
[#ここで字下げ終わり]

 これより帝|優游自適《ゆうゆうじてき》、居然として一頭陀《いちずだ》なり。九年|史彬《しひん》死し、程済《ていせい》猶《なお》従う。帝詩を善《よ》くしたもう。嘗《かつ》て賦《ふ》したまえる詩の一に曰く、

[#ここから2字下げ]
牢落《ろうらく》 西南 四十秋、
蕭々《しょうしょう》たる白髪 已《すで》に頭《こうべ》に盈《み》つ。
乾坤《けんこん》 恨《うらみ》あり 家いづくにか在《あ》る。
江漢 情《じょう》無し 水おのづから流る。
長楽 宮中《きゅうちゅう》 雲気散じ、
朝元《ちょうげん》 閣上 雨声収まる。
新蒲《しんぽ》 細柳《さいりゅう》 年々緑に、
野老《やろう》 声を呑《の》んで 哭《こく》して未《いま》だ休《や》まず。
[#ここで字下げ終わり]

 又|嘗《かつ》て貴州《きしゅう》金竺《き
前へ 次へ
全232ページ中224ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング