義ならんを欲す。
之を以て法を制す、其の仁ならんを欲す。
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 此《これ》等《ら》の文、蓋《けだ》し少時の為《つく》る所なり。嗚呼、運命|遭逢《そうほう》、又何ぞ奇なるや。二十余年の後にして、筆紙前に在り。これに臨みて詔を草すれば、富貴《ふうき》我を遅《ま》つこと久し、これに臨みて命《めい》を拒まば、刀鋸《とうきょ》我に加わらんこと疾《と》し。嗚呼、正学先生《せいがくせんせい》、こゝに於《おい》て、成王《せいおう》いずくに在《あ》りやと論じ、こゝに於て筆を地に擲《なげう》って哭《こく》す。父に負《そむ》かず、師に負《そむ》かず、天に合《がっ》して人に合《がっ》せず、道に同じゅうして時に同じゅうせず、凛々烈々《りんりんれつれつ》として、屈せず撓《たゆ》まず、苦節|伯夷《はくい》を慕わんとす。壮なる哉《かな》。
 帝、孝孺の一族を収め、一人を収むる毎《ごと》に輙《すなわ》ち孝孺に示す。孝孺顧みず、乃《すなわ》ち之を殺す。孝孺の妻|鄭氏《ていし》と諸子《しょし》とは、皆|先《ま》ず経死《けいし》す。二女|逮《とら》えられて淮《わい》を過ぐる時、相《あい》与《とも》に橋
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