》る。孝孺曰く、何ぞ成王の弟を立てたまわざるや。帝曰く、これ朕《ちん》が家事なり、先生はなはだ労苦する勿《なか》れと。左右をして筆札《ひっさつ》を授けしめて、おもむろに詔《みことのり》して曰く、天下に詔する、先生にあらずんば不可なりと。孝孺|大《おおい》に数字を批して、筆を地に擲《なげう》って、又|大哭《たいこく》し、且《かつ》罵《ののし》り且|哭《こく》して曰く、死せんには即《すなわ》ち死せんのみ、詔《しょう》は断じて草す可からずと。帝|勃然《ぼつぜん》として声を大にして曰く、汝いずくんぞ能《よ》く遽《にわか》に死するを得んや、たとえ死するとも、独り九族を顧みざるやと。孝孺いよ/\奮って曰く、すなわち十族なるも我を奈何《いか》にせんやと、声|甚《はなは》だ※[#「厂+萬」、第3水準1−14−84]《はげ》し。帝もと雄傑剛猛なり、是《ここ》に於て大《おおい》に怒《いか》って、刀を以て孝孺の口を抉《えぐ》らしめて、復《また》之を獄に錮《こ》す。


 孝孺の宋潜渓《そうせんけい》に知らるゝや、蓋《けだ》し其《そ》の釈統《しゃくとう》三|篇《ぺん》と後正統論《こうせいとうろん》とを以《もっ
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