君の度ありて、明律|因《よ》りて以《もっ》て成るというべし。既にして太祖崩じて太孫の位に即《つ》きたもうや、刑官に諭《さと》したまわく、大明律は皇祖の親しく定めさせたまえるところにして、朕《ちん》に命じて細閲せしめたまえり。前代に較《くら》ぶるに往々重きを加う。蓋《けだ》し乱国を刑するの典にして、百世通行の道にあらざる也。朕が前《さき》に改定せるところは、皇祖|已《すで》に命じて施行せしめたまえり。然《しか》れども罪の矜疑《きょうぎ》すべき者は、尚《なお》此《これ》に止《とど》まらず。それ律は大法を設け、礼は人情に順《したが》う。民を斉《ととの》うるに刑を以てするは礼を以てするに若《し》かず。それ天下有司に諭し、務めて礼教を崇《たっと》び、疑獄を赦《ゆる》し、朕が万方《ばんぽう》と与《とも》にするを嘉《よろこ》ぶの意に称《かな》わしめよと。嗚呼《ああ》、既に父に孝にして、又民に慈なり。帝の性の善良なる、誰《たれ》がこれを然らずとせんや。
是《かく》の如きの人にして、帝《みかど》となりて位を保つを得ず、天に帰して諡《おくりな》を得《う》る能《あた》わず、廟《びょう》無く陵無く、西山《せ
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