《な》せと。此《この》時《とき》や燕の軍の勢《いきおい》、実に岌々乎《きゅうきゅうこ》として将《まさ》に崩れんとするの危《き》に居《お》れり。孤軍長駆して深く敵地に入り、腹背左右、皆我が友たらざる也、北平は遼遠《りょうえん》にして、而《しか》も本拠の四囲|亦《また》皆敵たる也。燕の軍戦って克《か》てば則《すなわ》ち可、克たずんば自ら支うる無き也。而《しこう》して当面の敵たる何福《かふく》は兵多くして力戦し、徐輝祖《じょきそ》は堅実にして隙《ひま》無く、平安《へいあん》は驍勇《ぎょうゆう》にして奇を出《いだ》す。我軍《わがぐん》は再戦して再挫《さいざ》し、猛将多く亡びて、衆心|疑懼《ぎく》す。戦わんと欲すれば力足らず、帰らんとすれば前功|尽《ことごと》く廃《すた》りて、不振の形勢|新《あらた》に見《あら》われんとす。将卒を強いて戦わしめんとすれば人心の乖離《かいり》、不測の変を生ずる無きを保《ほ》せず。諸将争って左するを見て王の怒るも亦《また》宜《むべ》なりというべし。然《しか》れども此《この》時《とき》の勢《いきおい》、ただ退かざるあるのみ、燕王の衆意を容《い》れずして、敢然として奮戦
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