い》に畢《ことごと》く河を渡る。南軍の瞿能父子、平安等、房寛《ぼうかん》の陣を擣《つ》いて之を破る。張玉等|之《これ》を見て懼色《くしょく》あり。王曰く、勝負《しょうはい》は常事のみ、日中を過ぎずして必ず諸君の為《ため》に敵を破らんと。既《すなわ》ち精鋭数千を麾《さしまね》いて敵の左翼に突入す。王の子|高煦《こうこう》、張玉等の軍を率いて斉《ひと》しく進む。両軍相争い、一進一退す、喊声《かんせい》天に震い 飛矢《ひし》雨の如し。王の馬、三たび創《きず》を被《こうむ》り、三たび之を易《か》う。王|善《よ》く射る。射るところの箭《や》、三|箙《ふく》皆尽く。乃《すなわ》ち剣を提《ひっさ》げて、衆に先だちて敵に入り、左右奮撃す。剣鋒《けんぽう》折れ欠けて、撃《う》つに堪《た》えざるに至る。瞿能《くのう》と相《あい》遇《あ》う。幾《ほと》んど能の為に及ばる。王急に走りて※[#「こざとへん+是」、第3水準1−93−60]《つつみ》に登り、佯《いつわ》って鞭《むち》を麾《さしまね》いで、後継者を招くが如くして纔《わずか》に免《まぬか》れ、而して復《また》衆を率いて馳《は》せて入る。平安|善《よ》く
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