碑《しんどうひ》を製するに至らしむ。又一|箇《こ》の異人《いじん》というべし。魔王の如《ごと》く、道人《どうじん》の如く、策士の如く、詩客《しかく》の如く、実に袁※[#「王+共」、第3水準1−87−92]《えんこう》[#「袁※[#「王+共」、第3水準1−87−92]」は底本では「袁洪」]の所謂《いわゆる》異僧なり。其《そ》の詠ずるところの雑詩の一に曰《いわ》く、

[#ここから2字下げ]
志士は 苦節を守る、
達人は 玄言《げんげん》に滞《とどこお》らんや。
苦節は 貞《かた》くす可《べ》からず、
玄言 豈《あに》其《そ》れ然《しか》らんや。
出《いづ》ると処《お》ると 固《もと》より定《さだまり》有り、
語るも黙するも 縁無きにあらず。
伯夷《はくい》 量《りょう》 何《なん》ぞ隘《せま》き、

宣尼《せんじ》 智 何ぞ円《えん》なる。
所以《ゆえ》に 古《いにしえ》 の君子、
命《めい》に安んずるを 乃《すなわ》ち賢と為《な》す。
[#ここで字下げ終わり]

 苦節は貞《かた》くす可《べ》からずの一句、易《えき》の爻辞《こうじ》の節の上六《しょうりく》に、苦節、貞《かた》くすれば凶なり、とあるに本《もと》づくと雖《いえど》も、口気おのずから是《これ》道衍の一家言なり。況《いわ》んや易の貞凶《ていきょう》の貞は、貞固《ていこ》の貞にあらずして、貞※[#「毎+卜」、345−6]《ていかい》の貞とするの説無きにあらざるをや。伯夷量何ぞ隘《せま》きというに至っては、古賢の言に拠《よ》ると雖も、聖《せい》の清《せい》なる者に対して、忌憚《きたん》無きも亦《また》甚《はなはだ》しというべし。其《そ》の擬古《ぎこ》の詩の一に曰く、

[#ここから2字下げ]
良辰《りょうしん》 遇《あ》ひ難きを念《おも》ひて、
筵《えん》を開き 綺戸《きこ》に当る。
会す 我が 同門の友、
言笑 一に何ぞ※[#「月+無」、UCS−81B4、346−2]《あじわい》ある。
素絃《そげん》 清《きよき》商《しらべ》を発《おこ》し、
余響《よきょう》 樽爼《そんそ》を繞《めぐ》る。
緩舞《かんぶ》 呉姫《ごき》 出《い》で、
軽謳《けいおう》 越女《えつじょ》 来《きた》る。
但《ただ》欲《ねが》ふ 客《かく》の※[#「てへん+弃」、346−7]酔《へんすい》せんことを、
※[#「角+光」、第3水準
前へ 次へ
全116ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング