に敗れんとするを憂ふる也。赧は易ふるより赧なるは莫く、恥は盗より恥なるは莫し。妙は鬆を用ゐるより妙なるは莫く、昏は劫を覆すより昏なるは莫し。

    二 奕旨  後漢  班 固

○北方の人、碁を謂つて奕と為す。之を弘め之を説いて、大略を挙げん。
 此数句一篇の文字の序分なり。班固は支那有数の史家にして、卓絶せる文人也。
○局必ず方正なるは、地則に象どる也。道必ず正直なるは、明徳を神にする也。
 局は碁盤なり。古は地を以て方となせり、故に地則に象どるといふ。道は碁盤上の線道なり、明徳は即ち正直也。
○棊に白黒有るは、陰陽分る也。駢羅列布するは天文に効《なら》ふ也。
 棊は碁に同じ、棊は即ち棊子にして、本来一字にて足る也。白は陽、黒は陰也。駢羅列布は白黒の棊子の散布せるさまをいふ。これを天上星辰の羅列に比して言ふ也。
○四象既に陳す、之を行ふは人に在り。蓋し王政也。
 四象は地則、明徳、陰陽、天文なり。碁の事既に陳在すれば、之を行ふは人に在り。其の行ふところは蓋し王政なり、覇道の騙詐暴力を主とするにあらずの意。
○或は虚しく設け予め置き、以て自から衛護す。蓋し庖犠網罟の制に象どる。
 
前へ 次へ
全17ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング