勢分る、勢分るれば則ち救ひ難し。棋を救ふには逼る勿れ、逼れば則ち彼実して而して我虚す。虚しければ則ち攻められ易く、実すれば則ち破り難し。時に臨みて変通せよ、宜しく執一なる勿れ。
○夫れ智者は未だ萌さゞるに見、愚者は成事を睹る。故に己の害を知りて、而して彼の利を図る者は勝つ。以て戦ふべきと、以て戦ふ可からざるとを知る者は勝つ。衆寡の用を識る者は勝つ。虞を以て不虞を待つ者は勝つ。逸を以て労を待つ者は勝つ。戦はずして人を屈する者は勝つ。
○夫れ奕棋の勢を布くは、相接連するを務む。始より終に至るまで、着※[#「※」は二の字点(踊り字)、面区点番号1−2−22、108−12]先を求めよ。局に臨み交※[#「※」は二の字点(踊り字)、面区点番号1−2−22、108−13]争ひ、雌雄未だ決せずば、毫釐も以て差《たが》ふ可からず。局勢已に羸《つか》れなば、精を専にして生を求めよ。局勢已に弱くば、意を鋭くして侵し綽《と》けよ。辺に沿ひて而して走れば、其の生を得る者と雖も敗る。弱くして而して伏せざる者は愈《いよ/\》屈し、躁いで而して勝を求むる者は多く敗る。両勢相囲まば、先づ其外に促れ。勢孤にして授寡ければ
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