は甚だ寥※[#「※」は二の字点(踊り字)、面区点番号1−2−22、106−14]、彼と我とを併せて、棋経十三篇に及ぶもの無し。十三篇は蓋し孫子に擬する也。中に名言多きは、前人既にこれを言ふ。棊有つてより以来、言を立て道を論ずる、これに過ぐる者有る無し、目して棋家の孫子と為すも、誰か敢て当らずとせんや。棋は十三篇に尽くといふも可ならん。杜夫子、王積薪の輩、技一桙ノ秀づと雖も、今にして其の観る可き無きを憾む。棊の大概、是の如きなり。
[#以下、行頭に「○」の付く行以外は2字下げ]

     一 棋経妙旨

○古より今に及ぶまで、奕者同局無し。伝に曰く、日※[#「※」は二の字点(踊り字)、面区点番号1−2−22、107−3]に新なりと。故に宜しく意を用ゐる深くして而して慮を存する精に、以て其の勝負の由るところを求めば、則ち其の未だ至らざる所に至らん。
○棋者正を以て其勢を合し、権を以て其敵を制す。戦未だ合せずして而して算す。戦つて勝つ者は、算を得る多き也。戦つて勝たざる者は算を得る少き也。戦已に合して而して勝負を知らざる者は算無き也。兵法に曰く、算多きは勝ち、算少きは勝たずと。
 多算勝、
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