がないぞと、近寄ったのを五、六人、蹴散らして、ぱっと退《ひ》く中を、衝《つ》と抜けると、岩を飛び、岩を飛び、岩を飛んで、やがて槍を杖《つ》いて岩角《いわかど》に隠れて、それなりけりというので、さてはと、それからは私がその娘に出逢う門出《かどで》だった誕生日に、鈴見《すずみ》の橋の上まで来ては、こちらを拝んで帰り帰りしたですが、母が亡《なく》なりました翌年から、東京へ修行に参って、国へ帰ったのは漸《やっ》と昨年。始終望んでいましたこの山へ、後《あと》を尋ねて上《のぼ》る事が、物に取紛《とりまぎ》れている中《うち》に、申訳《もうしわけ》もない飛んだ身勝手な。
またその薬を頂かねばならないようになったです。以前はそれがために類少《たぐいすくな》い女を一人、犠《いけにえ》にしたくらいですから、今度は自分がどんな辛苦《しんく》も決して厭《いと》わない。いかにもしてその花が欲しいですが。」
言う中《うち》に胸が迫って、涙を湛《たた》えたためばかりでない。ふと、心付《こころづ》くと消えたように女の姿が見えないのは、草が深くなった所為《せい》であった。
丈《たけ》より高い茅萱《ちがや》を潜《くぐ
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