連れられて行ったです。
後《のち》は自分ばかり、乳母《うば》に手を曳《ひ》かれてお詣《まいり》をしましたッけ。別に拝みようも知らないので、唯《ただ》、母親の病気の快くなるようと、手を合せる、それも遊び半分。
六月の十五日は、私の誕生日で、その日、月代《さかやき》を剃《そ》って、湯に入ってから、紋着《もんつき》の袖《そで》の長いのを被《き》せてもらいました。
私がと言っては可笑《おかし》いでしょう。裾模様《すそもよう》の五《いつ》ツ紋《もん》、熨斗目《のしめ》の派手な、この頃聞きゃ加賀染《かがぞめ》とかいう、菊だの、萩《はぎ》だの、桜だの、花束が紋《もん》になっている、時節に構わず、種々《いろいろ》の花を染交《そめま》ぜてあります。尤《もっと》も今時《いまどき》そんな紋着を着る者はない、他国《たこく》には勿論《もちろん》ないですね。
一体この医王山に、四季の花が一時《いちじ》に開く、その景勝を誇るために、加賀《かが》ばかりで染めるのだそうですな。
まあ、その紋着を着たんですね、博多《はかた》に緋《ひ》の一本独鈷《いっぽんどっこ》の小児帯《こどもおび》なぞで。
坊やは綺麗《きれ
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