かかる。
晃、切払い、追い落し、冷々然として、峰の方《かた》に向って、学円と二人彫像のごとく立ちつつあり。
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晃 波だ。
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と云う時、学円ハタと俯伏《うつぶ》しになると同時に、晃、咽喉《のど》を斬《き》って、うつぶし倒る。
白雪。一際《ひときわ》烈《はげ》しきひかりものの中《うち》に、一たび、小屋の屋根に立顕《たちあらわ》れ、たちまち真暗《まっくら》に消ゆ。再び凄《すさまじ》じき電《いなびかり》に、鐘楼に来り、すっくと立ち、鉄杖《てつじょう》を丁《ちょう》と振って、下より空さまに、鐘に手を掛く。鐘ゆらゆらとなって傾く。
村一同|昏迷《こんめい》し、惑乱するや、万年姥《まんねんうば》、諸眷属《しょけんぞく》とともに立ちかかって、一人も余さず尽《ことごと》く屠《ほふ》り殺す。――
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白雪 姥《うば》、嬉しいな。
一同 お姫様。(と諸声《もろごえ》凄《すご》し。)
白雪 人間は?
姥 皆、魚《うお》に。早や泳いでおります。田螺《たに
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