》ないか。洟垂《はなったら》しが、俺は料簡《りょうけん》が広いから可《い》いが、気の早いものは国賊だと思うぞ、汝《きさま》。俺なぞは、鉱蔵は、村はもとよりここに居るただこの人民蒼生《じんみんそうせい》のためというにも、何時《なんどき》でも生命を棄てるぞ。
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時に村人は敬礼し、村長は頤《あご》を撫《な》で、有志は得意を表す。
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晃 死ね!(と云うまま落したる利鎌《とがま》を取ってきっと突《つき》つく。)
鉱蔵 わあ。(と思わず退《さが》る。)
晃 死ね、死ね、死ね、民のために汝《きさま》死ね。見事に死んだら、俺も死んで、それから百合を渡してやる。死ね、死《しな》ないか。
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とじりりと寄るたび、鉱蔵ひょこひょこと退る。お百合、晃の手に取縋ると、縋られた手を震わしながら、
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し、しからずんば決闘せい。
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一同その詰寄るを、わッわと遮り留《とど》む。
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傍《そば》へ寄るな、口が臭いや、こいつらも! 汝等《きさまら》は
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