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一同敬う。=でんでん太鼓に笙《しょう》の笛、起上り小法師《こぼし》に風車《かざぐるま》==と唄うを聞きつつ、左右に分れて、おいおいに一同入る。陰火全く消ゆ。
月あかりのみ。遠くに犬|吠《ほ》え、近く五位鷺《ごいさぎ》啼《な》く。
お百合、いきを切って、褄《つま》もはらはらと遁《に》げ帰り、小家《こや》の内に駈入《かけい》り、隠る。あとより、村長|畑上嘉伝次《はたがみかでんじ》、村の有志|権藤《ごんどう》管八、小学校教員斎田初雄、村のものともに追掛《おっか》け出づ。一方より、神官代理|鹿見宅膳《しかみたくぜん》、小力士《こりきし》、小烏風呂助《こがらすふろすけ》と、前後《あとさき》に村のもの五人ばかり、烏帽子《えぼし》、素袍《すおう》、雑式《ぞうしき》、仕丁《しちょう》の扮装《いでたち》にて、一頭の真黒《まっくろ》き大牛を率いて出づ。牛の手綱は、小力士これを取る。
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村一 内へ隠れただ、内へ隠れただ。
村二 真暗《まっくら》だあ。
初雄 灯《あかり》を消したって夏の虫だに。
管八 踏込《ふん
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