門の名誉と云う気障《きざ》な考えが有る内は、情合は分りません。そういうのが、夫より、実家《さと》の両親《ふたおや》が大事だったり、他《ひと》の娘の体格検査をしたりするのだ。お妙さんに指もささせるもんですか。
 お妙さんの相談をしようと云うんなら、先ず貴女から、名誉も家も打棄《うっちゃ》って、誰なりとも好いた男と一所になるという実証をお挙げなさい。」
 と意気込んで激しく云うと、今度は夫人が、気の無い、疲れたような、倦《うん》じた調子で、
「そしてまた(結婚式は、安東村の、あの、乞食小屋見たような茅屋《あばらや》で挙げろ)でしょう。貴下はまるッきり私たちと考えが反対《あべこべ》だわ。何だか河野の家を滅ぼそうというような様子だもの、家に仇《あだ》する敵《かたき》だわ。どうして、そんな人を、私厭でないんだか、自分で自分の気が知れなくッてよ。ああ、そして、もう、私、慈善市《バザア》へ行かなくッては。もう何でも可いわ! 何でも可いわ。」
 夫人と……別れたあとで、主税はカッと障子を開けて、しばらく天を仰いでいたが、
「ああ、今日はお妙さんの日だ。」と、呟《つぶや》いて仰向けに寝た――妙子の日とは
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