い》は見せたが、御承知の為人《ひととなり》で、どうとも謂《い》わぬ。
 姉夫人は、やっぱり半分《なかば》隠れたまま、
「滝ちゃんや、透《とおる》さんは。」
「母様《かあさん》が出掛けるんで、跡を追うですから、乳母《ばあや》が連れて、日曜だから山田(玄関の書生の名)もついて遊びです。平時《いつも》だと御宅へ上るんだけれど、今日の慈善会には、御都合で貴女も出掛けると云うから、珍らしくはないが、また浅間へ行って、豆か麩《ふ》を食わしとるですかな。」
「ではもう菅子さんは参りましたね。」
「先刻《さっき》出たです。」
 なぜ待っててくれないのだろう、と云う顔色《かおつき》もしないで、
「ああ、もっと早く来れば可《よ》うござんした。一所に行って欲しかったし、それに四五日お来《み》えなさらないから、滝ちゃんや透さんの顔も見たくって、」
 と優しく云って本意《ほい》なそう。一門の中《うち》に、この人ばかり、一人《いちにん》も小児を持たぬ。

       三十

 姉夫人の、その本意無げな様子を見て、理学士は、ああ、気の毒だと思うと、この人物だけにいっそ口重になって、言訳もしなければ慰めもせずに、希
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