、その恵《めぐみ》に依って、蘇生《いきかえ》るのでありますが、しかしそれは、広大無辺な自然の力でなくっては出来ない事で、人間|業《わざ》じゃ、なかなか焼石へ如露《じょろ》で振懸けるぐらいに過ぎますまい。」
三十二
「広く行渉《ゆきわた》るばかりを望んで、途中で群消《むらぎ》えになるような情を掛けずに、その恵の露を湛《たた》えて、ただ一つのものの根に灌《そそ》いで、名もない草の一葉だけも、蒼々《あおあお》と活かして頂きたい。
大勢寄ってなさる仕事を、貴女方、各々《めいめい》御一人|宛《ずつ》で、専門に、完全に、一|人《にん》を救って下さるわけには参りませんか。力が余れば二人です、三人です、五人ですな。余所《よそ》の子供の世話を焼く隙《ひま》に、自分の児《こ》に風邪を感《ひ》かせないように、外国の奴隷に同情をする心で、御自分お使いになる女中を勦《いたわ》ってやって欲しいんですが、これじゃ大掴《おおづか》みのお話です、何もそれをかれこれ申上げるわけではないのです。
ところが、差当り、今目の前に、貴女の一雫《ひとしずく》の涙を頂かないと、死んでも死に切れない、あわれな者があるんです。
この事に就きましては、私《わたくし》は夜の目も合わないほど心を苦めまして。」
とようよう少し落着いて、
「前《ぜん》から、貴女の御憐愍《ごれんみん》を願おうと思っていたんですけれど、島山さんのと違って、貴女には軽々《かろがろ》しくお目に懸《かか》る事も出来ませんし、そうかと云って、打棄《うっちゃ》って置けば、取返しのなりません一大事、どうしようかと存じておりました処へ、実《まこと》に何とも思いがけない、不思議な御光来《おいで》で、殊にそれが慈善会にいらっしゃる途中などは、神仏の引合わせと申しても宜しいのです。
どうぞ、その、遍《あまね》く御施しになろうという如露の水を一雫、一滴で可《よ》うございます、私《わたくし》の方へお配分《すそわけ》なすってくださるわけには参りませんか。
御存じの風来者でありますけれども、早瀬が一生の恩に被《き》ます。」
と拳《こぶし》を握り緊《し》めて云うのを、半ば驚き、半ば呆れ、且つ恐れて聞いていたようだった。重かった夫人の眉が、ここに至ると微笑《ほほえみ》に開けて、深切に、しかし躾《たしな》めるような優しい調子で、
「お金子《かね》が
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