ああ、目が見えない。(押倒され、取って伏せらる)無念。
夫人 (獅子の頭をあげつつ、すっくと立つ。黒髪乱れて面《おもて》凄《すご》し。手に以前の生首の、もとどりを取って提ぐ)誰の首だ、お前たち、目のあるものは、よっく見よ。(どっしと投ぐ。)
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――討手わッと退き、修理、恐る恐るこれを拾う。
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修理 南無三宝《なむさんぽう》。
九平 殿様の首だ。播磨守|様御首《みしるし》だ。
修理 一大事とも言いようなし。御同役、お互に首はあるか。
九平 可恐《おそろし》い魔ものだ。うかうかして、こんな処に居べきでない。
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討手一同、立つ足もなく、生首をかこいつつ、乱れて退く。
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図書 姫君、どこにおいでなさいます。姫君。
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夫人、悄然《しょうぜん》として、立ちたるまま、もの言わず。
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図書 (あわれに寂しく手探り)姫君、どこにおい
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