階子《はしご》の上より、真先《まっさき》に、切禿《きりかむろ》の女童、うつくしき手鞠《てまり》を両袖に捧げて出づ。
亀姫、振袖、裲襠《うちがけ》、文金の高髷《たかまげ》、扇子を手にす。また女童、うしろに守刀《まもりがたな》を捧ぐ。あと圧《おさ》えに舌長姥、古びて黄ばめる練衣《ねりぎぬ》、褪《あ》せたる紅《あか》の袴《はかま》にて従い来《きた》る。
天守夫人、侍女を従え出で、設けの座に着く。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
薄 (そと亀姫を仰ぐ)お姫様《ひいさま》。
[#ここから2字下げ]
出むかえたる侍女等、皆ひれ伏す。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
亀姫 お許し。
[#ここから2字下げ]
しとやかに通り座につく。と、夫人と面《おもて》を合すとともに、双方よりひたと褥《しとね》の膝を寄す。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
夫人 (親しげに微笑《ほほえ》む)お亀様。
亀姫 お姉様《あねえさま》、おなつかしい。
夫人 私もお可懐《なつかし》い。――
[#ここから2字下
前へ
次へ
全59ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング