鐵槌の音
泉鏡花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)天《てん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地より5字上げ]明治三十年六月

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)てう/\
−−

 天《てん》未《いまだ》に闇《くら》し。東方《とうはう》臥龍山《ぐわりうざん》の巓《いたゞき》少《すこ》しく白《しら》みて、旭日《きよくじつ》一帶《いつたい》の紅《こう》を潮《てう》せり。昧爽《まいさう》氣《き》清《きよ》く、神《しん》澄《す》みて、街衢《がいく》縱横《じうわう》の地平線《ちへいせん》、皆《みな》眼眸《がんぼう》の裡《うち》にあり。然《しか》して國主《こくしゆ》が掌中《しやうちう》の民《たみ》十萬《じふまん》、今《いま》はた何《なに》をなしつゝあるか。
 これより旬日《じゆんじつ》の前《まへ》までは、前田《まへだ》加賀守《かがのかみ》治脩公《ちしうこう》、毎朝《まいてう》缺《かゝ》すことなく旭《あさひ》を禮拜《らいはい》なし給《たま》ふに、唯《たゞ》見《み》る寂寞《せきばく》たる墓《はか》の
次へ
全4ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング