らまち》、地黄煎口《ぢくわうぜんぐち》、或《あるひ》は鶴來往來《つるぎわうらい》より、野菜《やさい》を擔荷《にな》ひて百姓《ひやくしやう》の八百物市《やほものいち》に赴《おもむ》く者《もの》、前後疾走《ぜんごしつそう》相望《あひのぞ》みて、氣競《きほひ》の懸聲《かけごゑ》勇《いさ》ましく、御物見下《おものみした》を通《とほ》ること、絡繹《らくえき》として織《お》るが如《ごと》し。
 治脩公《ちしうこう》これを御覽《ごらん》じ、思《おも》はず莞爾《につこ》と、打笑《うちゑ》み給《たま》ふ。時《とき》に炊烟《すゐえん》數千流《すうせんりう》。爾時《そのとき》公《こう》は左右《さいう》を顧《かへり》み、
「見《み》よ我《わ》が黽勉《びんべん》の民《たみ》は他《ひと》よりも命《いのち》長《なが》し。」
[#地より5字上げ]明治三十年六月



底本:「鏡花全集 巻二十七」岩波書店
   1942(昭和17)年10月20日第1刷発行
   1988(昭和63)年11月2日第3刷発行
※題名の下にあった年代の注を、最後に移しました。
入力:門田裕志
校正:米田進
2002年4月24日作成
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