二、三羽――十二、三羽
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)雀《すずめ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八十|幾《いく》つ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《ろう》たけた
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引越しをするごとに、「雀《すずめ》はどうしたろう。」もう八十|幾《いく》つで、耳が遠かった。――その耳を熟《じっ》と澄ますようにして、目をうっとりと空を視《なが》めて、火桶《ひおけ》にちょこんと小さくいて、「雀はどうしたろうの。」引越しをするごとに、祖母のそう呟《つぶや》いたことを覚えている。「祖母《おばあ》さん、一所《いっしょ》に越して来ますよ。」当てずッぽに気安めを言うと、「おお、そうかの。」と目皺《めじわ》を深く、ほくほくと頷《うなず》いた。
そのなくなった祖母は、いつも仏《ほとけ》の御飯の残りだの、洗いながしのお飯粒《まんまつぶ》を、小窓に載せて、雀を可愛《かわい》がっていた
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