おのれ。」
 と立身上《たちみあが》りに、盞《さかずき》を取って投げると、杯洗《はいせん》の縁《ふち》にカチリと砕けて、颯《さっ》と欠《かけ》らが四辺《あたり》に散った。
 色めき白ける燈《ともしび》に、一重瞼《ひとえまぶち》の目を清《すず》しく、美津は伏せたる面《おもて》を上げた。
「ああ、皆さん、私が猿を舞いまっせ[#「舞いまっせ」は底本では「舞いまつせ」]。旦那さん、男のためどす。畜生になってな、私が天王寺の銀杏《いちょう》の下で、トントン踊って、養うよってな。世帯せいでも大事ない、もう貴下《あんた》、多一さんを虐《いじ》めんとおくれやす。
 ちゃと隙《ひま》もろうて去《い》ぬよって、多一さん、さあ、唄いいな、続いて、」
 と、襟の扇子を衝《つ》と抜いて、すらすらと座へ立った。江戸は紫、京は紅《べに》、雪の狩衣|被《か》けながら、下萌《したも》ゆる血の、うら若草、萌黄《もえぎ》は難波《なにわ》の色である。
 丸官は掌《こぶし》を握った。
 多一の声は凜々《りんりん》として、
「しもにんにんの宝の中に――火取る玉、水取る玉……イヤア、」
 と一つ掛けた声が、たちまち切なそうに掠《か
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