う疼痛《いたみ》はないか。こないした嬉しさに、ずきずきしたかて忘らりょう。けど、疵は刻んで消えまいな。私が傍《そば》に居たものを。美津《みい》さんの大事な男に、怪我させて済まなんだな。
 そやけど、美津さん、怨《うら》みにばかり、思いやすな。何百人か人目の前で、打擲《ちょうちゃく》されて、熟《じっ》と堪《こら》えていやはったも、辛抱しとげて、貴女《あんた》と一所に、添遂げたいばかりなんえ。そしたら、男の心中《しんじゅう》の極印《ごくいん》打ったも同じ事、喜んだかて可《い》いのどす。」
 お美津は堪《こら》えず、目に袖を当てようとした。が、朱鷺色《ときいろ》衣に裏白きは、神の前なる薄紅梅、涙に濡らすは勿体ない。緋縮緬を手に搦《から》む、襦袢は席の乱れとて、強いて堪えた頬の靨《えくぼ》に、前髪の艶しとしとと。
 お珊は眦《まなじり》を多一に返して、
「な、多一さんもそうだすやろな。」
「はい!」と聞返すようにする。
「丸官はんに、柿の核《たね》吹かけられたり、口車に綱つけて廊下を引摺廻されたり、羅宇《らう》のポッキリ折れたまで、そないに打擲されやして、死身《しにみ》になって堪えなはったも、
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