物《ふだんぎもの》及び半纏《はんてん》に着《つ》くるもの、おなじく半襟と謂ふ。これには黒繻子、毛繻子、唐繻子、和繻子、織姫、南京黒八丈《なんきんくろはちぢやう》、天鵞絨《びろうど》など種々《しゆじゆ》あり。

     下着《したぎ》

 三枚襲《さんまいがさね》の時は衣地《きぬぢ》何《なに》にても三枚皆整ふべきを用ふ。たゞの下着は、八丈《はちぢやう》、糸織《いとおり》、更紗縮緬《さらさちりめん》お召等、人々の好みに因る、裏は本緋《ほんひ》、新緋《しんひ》等なり。

     合着《あひぎ》

 これも下着と大差なし、但し下着もこの合着も一体に上着よりは稍派手なるを用ゐるなり。

     上着《うはぎ》

 衣の地は殆ど枚挙に遑《いとま》あらず。四季をり/\、年齢、身分などにより人々の好あらむ、編者《へんしや》は敢て関《くわん》せざるなり。

     比翼《ひよく》

 一体三枚襲には上着も合着もはた下着も皆別々にすべきなれども、細身《さいしん》、柳腰《りうえう》の人、形態《けいたい》の風《かぜ》にも堪へざらむ、さまでに襲着《かさねぎ》してころ/\見悪《みにく》からむを恐れ、裾と袖口と襟とのみ二枚重ねて、胴はたゞ一枚になし、以て三枚襲に合せ、下との兼用に充《あ》つるなり、これを比翼といふ。甚だ外形をてらふ処の卑怯なる手段の如くなれども比翼といへばそれにて通り、我もやましからず、人も許すなり。

     腰帯《こしおび》

 衣服を、はおれる後、裾の長きを引上げて一幅《ひとはゞ》の縮緬にて腰を緊《し》め、然る後に衣紋《えもん》を直し、胸襟《きようきん》を整ふ、この時用ゐるを腰帯といふ、勿論外形にあらわれざる処、色は紅白、人の好に因る、価値《あたひ》の低きはめりんすもあり。

     下〆《したじめ》

 腰帯を〆めてふくらみたる胸の衣《きぬ》を下に推下《おしさ》げたる後、乳《ちゝ》の下に結ぶもの下〆《したじめ》なり、品類は大抵同じ、これも外には見えざるなり、近頃|花柳《くわりう》の艶姐《えんそ》、経済上、彼の腰帯とこの下〆とを略して一筋にて兼用《かねもち》ふ、すなわち腰を結びたる切《きれ》の余《あまり》を直ちに引上げて帯の下〆にしたるなり。其腰と帯との間にとき色縮緬など下〆のちらりと見ゆる処、頗る意気なりと謂ふものあり。

     帯

 一寸の虫にも五分の
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