り返して2字下げ]
※[#歌記号、1−3−28]いえど此方《こなた》は水鳥の浮寝の床の水離れ、よしあし原をたちかぬれば、
[#ここから2字下げ]
この間に早瀬手を取る、お蔦振返る早瀬もともに、ふりかえり伏拝む。
さて行《ゆ》かんとして、お蔦|衝《つ》と一方に身を離す。
[#ここで字下げ終わり]
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早瀬 どこへ行く。
お蔦 一人々々両側へ、別れたあとの心持を、しみじみ思って歩行《ある》いてみますわ。
早瀬 (頷《うなず》く。舞台を左右へ。)
お蔦 でも、もう我慢がし切れなくなって、私もしか倒れたら、駈《か》けつけて下さいよ。
早瀬 (頷く。)
お蔦 切通しを帰るんだわね、おもいを切って通すんでなく、身体《からだ》を裂いて分れるような。
早瀬 (頷く。)
[#ここから1字下げ]
お蔦しおしおと行《ゆ》きかかり、胸のいたみをおさえて立留《たちど》る、早瀬ハッと向合う。両方おもてを見合わす。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
※[#歌記号、1−3−28]|実《げ》に寒山のかなしみも、かくやとばかりふる雪に、積る……
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